TMスクエアーと図書館館長

晴れ。無風。とても暖かい。
穏やかな初冬のくしろ。


こういう日はカレーやのお客さんが大勢来てくれそうな雰囲気。
このような予感は外れる確率は半々なのだが
今日は見事に当たり。

「天気もいいし、ボーナス前にカレーでも食べるか」
などと意味のない気持ちに誘われて来てくれるのか、とてもありがたい。


そんな日曜日の午後二時、図書館でTMスクエアーのコンサート。

最近図書館の評判がすごくいい。
ネットでの予約、検索機能が充実したのと
一番変わったのが職員の対応。

以前は図書館で本を借りようと行くと
まるでソ連の出国管理事務所で社会主義国以外への出国申請をするみたいに緊張した。
(かなり大げさに言えばの話しです)

今は、デパートのお歳暮売り場で一つ一万円のハムの詰め合わせを
十個、しかもクレジットカードでの支払いをしてくれたお客様に対するような微笑みを
例え一冊の本しか借りない人へも投げかけてくれる。

それだけ図書館は変わった・・・ということです。
もちろん前からいらっしゃる職員の方でも感じのいい人は大勢いたのですが
そのいい感じを素直に出せない、いやな空気が流れていたような気がする。



図書館のことはともかく
本題のTMスクエアー。

最初の曲は「赤とんぼ」
あの有名な曲です。
信長貴富の編曲の素晴らしさもあるのですが
このコーラスは正直、期待以上の感動がありました。
(もっとうまい言葉でいい表せたらいいのですが・・・)
ピッチの正確さ、各パートのバランスの良さ。
なにより個人の音楽性の高さが
こまかい箇所ににじみ出ている。


このような少人数でのコーラスはごまかしがきかない。
さすがにみなさん声のプロではないので
ときどきピッチが少しずれたりするも
すばやくそれを修復する技術の高さ。


でもここまで素晴らしい合唱を聴かせるには
相当な練習の量も必要だったのでは、と推測させられる。


メンバーのそれぞれがとても楽しそうに歌っている姿は
後ろでじっと立ちながら見ていると嫉妬に似た気持ちさえ起きた。
「いいなあ 楽しそうで」と。


観客は満員。
しかも児童室に通じる廊下まで観客が並ぶ。
その間をぬって親子づれが児童室でへ行く。
ざわざわとして時々子どもの高い声が気になるが
TMスクエアーが歌い始めると、すーっと静かになり皆聴き入ってしまう。

泣く子は黙り、居眠りしている老人は目を覚ます。
恐るべし。


二部の最初の曲は
さびしいカシの木(やなせたかし/木下牧子

曲と曲の間には説明が入る。
曲や作曲者、作詞者。つくられた頃の時代背景。
アンパンマンでしか知らなかったやなせたかしの意外な面も紹介する。
とても丁寧でわかりやすく、
なによりこれからやる音楽をちゃんと聴いてみようという気になる説明。

しかもバックにはしっかりとカシの木があるではないですか
憎い演出。(多分カシの木ではないと思うけど、曲の雰囲気にピッタリだった)

聴いている側の緊張もほぐれ(なんで緊張していたのでしょうか?わかりません)
リラックスした頃の
「ほほえみ」(川崎洋/信長貴富)がとても良かった。
ソプラノの伸びのある声、豊かな声量、いいリズムに乗って楽しそうだった。


と、最後の頃になってネームプレートを付けた図書館職員のような人が加わる。
まさか一緒にうたうのでは、と心配したが
最後の「火の山の子守唄」のハミングの場所でこの人一歩前に出て、

「えー 本日はお寒い中ようこそお越しくださいました
私はこの図書館の館長○○です。
これからもこのような催しを多くして、魅力ある図書館にしていきたい」

と(だいたいこのような事を)話し出しました。
小憎らしい演出。挨拶をバックコーラス付きでやるなんて
晦日紅白歌合戦の〆の挨拶みたいじゃないか、思った。

しかもこの館長、声がいい。ハリのあるバリトン
しかも背が高くイケメンで若い。

この人か、図書館をデパートの歳暮売り場のような「いい雰囲気」にした人は。

そんな事を考えているうちに背景は夕日に染まりだし
幸せな気持ちで図書館を後にしました。


無料コンサート。
これをやったからって釧路経済の活性化にはつながらない
けど、いい所に住んでいる、という実感がある。