佐野商店
晴れ。冬晴れ。正月みたい。
近所の佐野商店が、店主病気のため閉店して早や二ヵ月半。
再開の見通しはたっていない。
もう結構なお年だし・・・もしかしたら無理かも。
佐野さんのおばちゃんの干し魚は人気があり
近所の人たちのみならず、車で遠方から買いに来る人たちもいた。
もちろん休坂の旅人たちも「ほっけ、こまい、一夜干しのイカ」など
お土産に買っていった。
一番人気は「ししゃも」。
店先に干してあるしゃもは、そのほとんどが注文品で、
急に行って
「おばちゃん、おいしそうだねえ、一串ちょうだい」などと言っても
「ごめんねぇ これみんな注文なんだわ〜」と言ってやんわり断られた。
あと、この場所は近所のおばちゃん、おじちゃんたちの「たまり場」だった。
ここで煙草をすいながらいろんな話しをする。
だから佐野さんのおばちゃんに聞けば近所のことはたいがいわかる。
誰が死んだとか、別れたとか、嫁にいったとか、病気だとか・・・。
近くの小学生たちは学校の帰りに佐野さんの店の前を通ると
「おばちゃん、こんにちは」と挨拶する。
内にいる暇なおばちゃんたちは、まるで孫に声をかけられたように喜ぶ。
佐野さんがやめてしまって、人通りが少なくなった気がする。
だから冬空の外にでると正月のような気がするのだ。